杉浦日向子

 粋は低出力の美学です。白粉を塗り、美服をまとい、宝石をちりばめる、バリバリにリキの入った、ガスイーターのキャデラック型満艦飾ではなくて、磨きあげた素顔に、渋好みの極致黒仕立て、ツール・ド・フランスのチャリンコ型美学です。その辺のゼロハンより役に立たなくても、かかるゼニコはベラボーです。実用外の贅沢、すなわち、「無用の贅」こそが粋の本質です。  無用の贅。日常生活に少しも必要ではない暇潰しと、何の役にも立たない座興に溺れてひたすら消費する。これが、粋な人の生き方です。